Psyche

ギリシア語の「Psyche」(プシュケー)ということばは、英語でサイケと発音することもあって、「心」や「魂」を表わすことばとして知られていますが、もとは「息吹き」、「氣息」、「呼吸」というサンスクリットの「プラーナ」(prana)、「アートマン」(atman)、ヘブライ語の「ルーアッハ」(ruah)、中国語、日本語の「氣」に当ることばです。

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ここでは、まず、「Psyche」は「Life」(“生命”、“生活”、“人生”、“元氣”、“活氣”)の根源にあたることばだということを確認しておきたいと思います。

ちなみに名著『神々の沈黙』を書いたジュリアン・ジェインズによると、ギリシア文字が誕生した直後、紀元前9世紀頃に叙事詩として書きとめられた『イーリアス』では「psyche」は今日の「life(生命)」とまったく同じ用法で使われていると書いています。

「心」ということば(概念)が成立して間もない古代ギリシア語をもう少し調べてみると、「プネウマ」(pneuma)、「テューモス」(thumos)という同じように“呼吸”を表わすことばが見つかります。

「プネウマ」は地、水、火、風という宇宙の四大エレメントのひとつの“風”で、アナクシメネスは万物の元は「プネウマ」とし、「氣息」と「空氣」が宇宙を包むとしました。

「テューモス」はさらに興味深く、「呼吸」であり、人間に“精氣”を吹き込んだ結果としての「勇氣」であり、また「身体」でもあり「心」でもあるという西洋語では珍しく両義性をそなえた不思議なことばなのです。

具体的にいうと、『イーリアス』の中で、「テューモス」は最初“身体的な活動”を表わすことばとして使われますが、徐々に「怒り」、「いらだち」のような“体内の感覚の高まり”を指すようになり、やがて、戦いたくてうずうずしている“内面の感情”つまり、「心」を表わすようになるのです。

つまり、「Psyche」は、「Life」であり、かつ「Body」でも「Mind」でもあるということになります。

身体哲学研究所では、「Body」と「Mind」を統合させるという、たんに心身二元論を超えるだけでなく、「Life」と「Psyche」も含めて人間の、そして、あらゆる生物の「Life」と「Psyche」を統合して、新しい共生の道を歩みたいと思っています。