はじめに

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身体哲学研究所では身体の調整にとって、何よりも骨(関節)と呼吸が大切だとしていますが骨(関節)と呼吸の解説をする前に、なぜ、私どものからだの研究所が「身体哲学研究所」と銘打っているのかについて、つまり、「身体哲学」とは何かについて簡単に説明しておきます。今から2500年程前に古代ギリシャで生じた西洋の学問の出発点として哲学は生じました。哲学とは広く知られてるように「知を愛する」(フィロ・ソフィア)philo 愛する,
sophia知、ということで、分かりやすく言うと、常識にとらわれずに物事を深く広く探究するということです。そうした哲学を志した賢者を哲学者と呼びますが、最も有名な哲学者はソクラテスですが、その同年代にヒポクラテスという哲学者がいました。ヒポクラテスは一般に哲学者というより、医学の祖として知られています。そのヒポクラテスは医学つまり、からだの治療には何よりも身体の哲学的探求が大切だといっているのです。  
私は2006年に『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』(現代書林)という本を出版しましたが、そこで一番初めに書いたのは、医学の祖ヒポクラテスが言っている医学にとっての哲学の大切さについてです。身体哲学者の私からすると、現代の医学は、エビデンスつまりE・B・M(Evidence Based Medicine)一辺倒の科学としての医学で哲学がほとんど失われてではしまっているように見えるのです。21世紀の現代、AIを中心とした高度なテクノロジーの発達で、いよいよ「科学による解明がすなわち知的理解」だと錯覚されているのが現状ですが、科学は決して万能ではなく、いくつかの限界があるのです。
科学の客観的、数理的理解はもちろん重要ですが、現代物理学が宇宙の十全な解明にまだほど遠いように、科学的医学はからだ(小宇宙)という神秘の解明にまだまだ到達していないのです。以下、私は「行法と哲学の一致」つまり「実践と理論の融合」という私の身体哲学の基本という観点でまとめた『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』の出版にまつわる話をいくつか書き、「身体哲学研究所」のホームページの入口とさせて頂きます。
『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』の執筆は、私が2000年に身体哲学道場・湧氣塾を立ち上げて、最初に仕上げた仕事でした。出版されたのは2006年1月ですが、準備にほぼ5年かかりました。
『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』は出版するに当って帯などに一切知人や著名人の推薦文は載せずに出しましたが、限られた領域ではありましたが、すぐに多くの反応がありました。

武道館発行の『武道』という雑誌には書評として「現代の武道家必読の書」と書かれました。図書新聞でも評価され全国推薦図書に選ばれ、実際に全国の図書館に置かれるようになりました。また共同通信社からの取材があり、全国の地方紙のべ26紙に私の写真入りで、かなり大きな記事が載りました。

文化史や医学史などの領域で優れた書物をたくさん書いておられる著名な学者がその著書(『気の日本人』立川昭二氏)のなかで取り上げて、2頁に渡って引用、言及されたこともありました。私が一番驚き、かつ感激したのは、九州の点字図書館の翻訳家が『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』を8冊本として点字翻訳して下さったことです。

ヒポクラテスの医学は哲学でなければならないという所に話を戻せば、『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』を出して間もなく人を介してお会いした、鈴木三朗という、長く看護婦学校の校長などを務められたその世界では知られた産婦人科の老医師には、『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』を熟読しての感想として「医学の原点をよく解説してくれている現代の医学に必読な素晴らしい本」だという、お褒めの言葉をいただきました。
 
最後に『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』を出版して17年経った今年(2023年)の『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』にまつわる話をひとつ追加しておきたいと思います。今年の5月に私の最新の本『「80歳の壁」を越えたければ親指を鍛えなさい』(講談社α新書・4月出版)の特別講習会を行いました。そこで新谷直恵さんという名編集者でもありライターでもある方にお会いしたのです。

その新谷さんから、しばらくして雑誌『ザ・フナイ』という、かなり長く連載しておられる「一歩先をいくインタビュー」というコーナーで私が対談記事のインタビュー取材を受けることになったのです。その時に新谷さんに『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』は私の愛読書ですといわれたのです。

20年近く前に書いた本を、しかも出版当時はアマゾンの難解本にランクインして限られた読者にしか読まれなかった本を、愛読書とする人がいたということは著者としては、これ以上の喜びはありません。
身体哲学研究所のこのページの初めに「身体哲学」についての説明と私の主著である『阿修羅の呼吸と身体論の彼方へ』について振り返ることで「身体哲学研究所」のリニューアルホームページの入口とさせて頂きます。